フト開発に従事する某サラリーマンの告白


あの日、、、、そう、あの日、、、、、。もう遠い昔のような昨日のはなし・・・・。


私は、いつものようにパソコンをハングアップさせていた。
Ctrl + Alt + Del。一日に何度も押す馴染みのあるキー達だ。
コンピュータのセットアッププログラムが始まったところで、PCが立ち上がるまでの間、書類
へと目を落とす。いつもと何も変わらない、どこにでもあるハングアップ後の光景だ。

ピピピッ!

あれ?何の音だろ?
ディスプレイに目を移した私が見たものは、見慣れない英文字列だった。

「このディスクからは立ち上がることが出来ません。仕様書を読んで下さい。(和訳)」

まじ?
おれなにかやったっけ???もしかしてハードディスククラッシュ???・・・・・・・。
実は私自身、PCを使い初めて以来、その手のトラブルには無縁のラッキーなやつなのだった。
私に限ってなんかの間違いに違いない!再起動してみよう。(どきどきどきどきどきどき)
そして再起動後・・・・。
ピピピッ!

「このディスクからは立ち上がることが出来ません。仕様書を読んで下さい。(和訳)」

サーーーーーーーーーーーーーーー(血の気の引く音)

「フルフォーマットしかないのか・・・。」
「しかも再インストール・・・。」
「もしかしてバックアップは1ヶ月前に取ったきりか・・・。」
「やべえ、明日は会議で進捗報告じゃん・・・。」
様々な考えが頭をよぎる・・・。

いや、今のは再起動の仕方が悪かったんだ。そうに違いない。

ピピピッ!
「このディスクからは立ち上がることが出来ません。仕様書を読んで下さい。(和訳)」

ひぇ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ。でもひょっとして叩けば直るかな?
こういうことを考える辺り、自分は真の理系ではないと思われる。

どうしよう・・・・・・・・・・・しばし途方にくれる・・・・・・・・・・・・・。

取りあえずPCを立ち上げないことには話にならない。意外に冷静な自分に驚きつつ(十分冷静
ではないと思うが)DOSのFDを突っ込んで再起動。

starting MS-DOS...

おお、こんなにMS−DOSが素晴らしく思えた一瞬はない。さあて、どうなってるんだろ?
あれ?Cドライブが認識されてないよーーーー。まじ??ゴソゴソゴソ・・・・・
う、、、マジだよ・・・・・・。

「やっぱりフルフォーマットか・・・。」
「でもバックアップはCドライブを全部取ってるから意外に楽?・・・。」
「いや、バックアップは圧縮してるからWIN95を入れなきゃどうにもならんのでは?。」
「まじかよ、95の設定なんてきれいに忘れたぞ・・・。」

マズイ、マズ過ぎる・・・。

茫然自失となりながらも私は外付けDドライブの中身を必死に見つめていた。しかし、Cドライ
ブはやはり見えてくれない。

さっきまではあんなに仲良しだったのに・・・
もう会えないだなんて・・・
そこにいることが分かってるのに・・・
一目見ることも出来ないの?・・・
あなたは自分のこと変わったって言うけど・・・
一体どこが変わったのよ・・・

データと恋愛は似ている・・・なんて考えている場合ではないのだ。

・・・・・ん?NU?
その時私は見覚えのある懐かしい感じのする文字列を見つけた。
NU?NU?NU?NU?
それはDドライブ内にひっそりとたたずんでいたディレクトリだった。
ノートン・・・・か?
そうだノートンユーティリティだ!!!!!!そうかその手があったか!!!

お願いします、ノートン様ぁ!!

私は、意気揚々とノートンユーティリティを立ち上げた。
しかぁ〜し、いかんせん滅多に立ち上げないものだけに全然使い方が分からない。
しかもVer6.1だ。(1993年製)本当にこれで大丈夫なのか???
一瞬見えかけていた太陽も、また黒くて厚い雲に覆われていったのであった。

だが私の潜在能力を全て引き出した操作の前にそんな障害は無きに等しかった。
そしてついにディスクドクターいうプログラムへとたどり着いたのだ。ふっふっふ。
ディスクドクター、スタート!!

「このドライブにはエラーがあります、修復しますか?」
するする!もちろん!!
「その前に退避ディスクを作成します。FDを用意して下さい。」
はいはい、お安い御用で。
ピピッ!ぶーーんぶーーん(処理の音)
「以前のパーティションが見えますか?」
え?そんなもんようわからんわ。
取りあえず、見てみようかな。
「その前に再起動します」
はいはい、よろしく。




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。




あれ?



おーーーい・・・・・・・・・・・・・・・・・。



立ち上がり時にFDを読みに行かないじゃん・・・。
生きてるかーーーい?




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

死んでる・・・・・・・。

まじぴょん?
そ、そ、そうだ、も、も、もう一度再起動してみよう。きっとタイミングが悪かったんだ。





・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。



え〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ん。


それから何分が経過したのだろう。何が起こったのかよく分からないまま私は自分を見失ってい
た。多分、口もずっと開きっぱなしだったと思われる。
しかし、人生前向きに生きなければならない。それが男の美学なのだ。
取りあえず、FD自体の故障を疑ってみることにした。確率は少ないが、もしもこれだとすごく
うれしい。
私は同じ部署のN藤さんにDOSのディスクを借りに行った。
「どうしたの?」
「いや、、、ちょっと、、、。」
私は語尾を濁しつつその場を後にした。まだ口に出せるほど心のキズは癒えていないのだ。

さて、もう一度再起動を掛けた。すでにどよ〜〜〜〜んと諦めの境地である。

ピピッ!
starting MS-DOS...

おお!まじですか!まじですか!!動いてくれるんですね、あなたは!!

しかし、まだまだ喜ぶにはあまりにも早過ぎる。直るという保証は何処にもないのだ。私は冷静
になるように自分に言い聞かせた。

またしてもノートンを呼び出す。
ディスクドクター、スタート!!

「以前のパーティションが見えますか?」
ばかやろー、そんなこと聞くからこんなことになったんじゃねーか!見えねーよ!!
「DISK1のパーティションにエラーが見つかりました。修復しますか?」
するに決まってるだろー!!
「万が一のために、このディスクのデータをバックアップしてください。」
ばかやろー、それができねえからこれやってんじゃねえか!!
「処理を開始します。YES?NO?」
え、、、、やっぱりちょっと待ってよ。おれ小心者なんだから。

どうしようかな・・・・ミスったら修復不可能なんだろうし・・・・だいたいDISK1ってC
ドライブなのか?・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
どきどきどきどきどきどきどきどきどきどきどきどきどきどきどきどきどきどきどきどきどきど

えいっ!!

ピピッ!ぶーーんぶーーん(処理の音)
「処理が終了しました。再起動します」


どきどきどきどきどきどきどきどきどきどきどきどきどきどきどきどきどきどきどきどきどきど

ピピッ!
starting windows95...

え?????もしかして、直った???

ん??  ほれほれ??  おっ・・・
やったーーーーーーー直ったーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!
♪チャララーーラーー♪♪ラーララーララーララッララ♪ラーララーララララー♪♪♪
(BGM 映画「ロッキー」の感動的な曲)

この瞬間、私はN藤さんとノートンに10万円ずつ払ってもいいとさえ思った。
むろん口には出さなかったが。

しかし、本当に直ってしまった・・・。あまりの呆気なさにビビるくらいだ。
ノートン恐るべし!!
いや、ノートンのお陰でもあるだろうが、それ以上に私の日頃の行いの良さが今回の幸運な結果
を招いたのだと言わざるを得ない。



PC過信の怖さと、データの脆さを思い知った、ある日の出来事であった。
そしてこの直後、バックアップを開始したことは言うまでもない。




お・し・ま・い