社食とラーメン


 大きな工場を有する会社には大抵、社員食堂なるものが存在する。御多聞に漏れずう
ちの会社にもそれはあり、その味はエクセレントとは言い難い。そりゃそうだろう、一
食168〜336円なんだから。これで旨いものが作れるんだったら外食産業の雄とし
て名乗りを上げるべきである。

 私も入社当時は社食を愛用していた一人であった。というか、最初は別工場の社食だ
ったのだ。この別工場の社食は、当時完成したばかりの新しい雰囲気も手伝って、味す
ら美味しく感じられた。ここで数ヶ月、明るいランチ生活に馴染んだ私が次に利用する
ようになったのが、現在の社食である。まず建物自体が古く、雰囲気が暗い。これだけ
でもかなり損をしていると言わざるを得ない。そして味も明らかに劣るものであった。
だが、それよりも不味い「寮の飯」というマイルストーンを心に有していた私にとって
大した問題ではなかったのだが、、、。もともと不味いとあまり感じない方だったし。

 そうは言っても、毎日食べていればやはり飽きてくるものだ。雰囲気への不満もあり
ついには社食に足を向けることはなくなってしまった。そこで次にハマったのがラーメ
ン食べ歩きだったというわけである。つまりラーメンとは社食に対するアンチテーゼだ
ったのだ。なるほどそういう事だったのか。((C)金田一少年)

 私的にはかなり盛り上がった食べ歩きであったが、ラーメンを毎日食べ続けるのもさ
すがに疲れるしお金も続かない。そこでそういう場合には社内売店で飢えをしのいでい
た。しかし社食に比べるとかなり割高なことに変わりはなかった。1ヶ月に1万円。こ
れが私の昼食代である。実働20日間として一日の割り当ては500円。この金額で一
日分を収めるのはかなり厳しいし、時として小遣い分にまで侵食が及ぶことも少なくな
かった。だいたいただでさえ購買意欲の高い私である。この私が月の小遣い2万円で足
りるはずも無い上に昼食代まで出していたんじゃお話にならない。こうなれば昼食代を
圧迫しようと考えるのは人間として当然の本能である。そして、そうする為には社食が
一番だということは幼稚園児でも明らかだ。いや、小学生くらいじゃないと明らかには
ならんか?

 そういう訳で実に数年ぶりに社食へ帰って来た。ああ、やっと本題に移れる。そうな
のだ、この長ったらしい今までの説明はすべて前振りである。びっくりしたなーもー。

 社食を利用する上で、最初にやらねばならないこと、それは食券を買うことだ。食券
とは言え、我が社では最新鋭のシステムが導入されている。なんと10枚綴りのバスの
回数券みたいなヤツをおばちゃんから直に購入するのである。売り手と買い手の間に人
情が介在する、まさに最先端の設備と言わざるを得ない。さすが我が社である。
しかし、10枚綴りというのがネックであった。つまり一度購入すると10枚分は食べ
なきゃいけないのだ。これが私を社食から遠ざけていた理由その2である。

さて、第一関門の食券入手は成功した。そうなると今度はいよいよ食べるモノを選ぶ段
階である。
食堂のメニューにはまず2枚券と1枚券というものがある。168円の食券2枚分か1
枚分かということだ。貧乏な私が1枚券を選ぶことは「プレステ2がバカ売れする」と
予想するよりもはるかに簡単なことであろう。

そうなると選択の余地は「ポークカレー」か「日替り麺類」のどちらかである。これら
2つのメニューは2枚券のブルジョワな奴等から見下されつつ、隅のほうでひっそり食
べるのが良く似合う。ああそうさ、どうせオイラは貧乏人さっ。ちくしょー、そのうち
ひとヤマ当てて2枚券で唐揚げ定食を食ってやるぅ。

しかし、しかしである。この屈辱的なはずの「日替り麺類」は意外にも競争率が高く、
出遅れた日には売り切れと言うさらに屈辱倍増な仕打ちに遭うことも珍しくない。
こ、こんなモノさえも満足に食べられないなんて、、、、、、。

そんな時私は、傷心のまま心の拠り所、ポークカレー売り場のおっちゃんのもとに歩い
ていくのである。もちろん「大盛りにして」という無理な注文を出すことも忘れない。

そんな私がついに禁断の2枚券に手を出すのは、通い始めて2週間ほど経ったある晴れ
た日のことだった。


次回予告 「ついに禁断の2枚券メニューを食す。それは一体なに????」